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【2015.04】安全の目利き力

安全を取り上げたTV番組でいまも印象に残っているものがある。今年2月2日にNHKで放送された「プロフェッショナル仕事の流儀」という番組。その時の内容は清掃に関して各方面で活躍されている方々を取り上げていた。羽田空港ビルでのプロフェッショナルに続いて、ビル外壁清掃会社の創業者であり、かつ第一線で働いている社長の登場があった。地上40、50mの高層ビル外壁の窓を屋上から垂らしたロープに支えられて手作業で綺麗にしていく過酷な仕事ぶりを紹介していた。その社長さんが漏らした言葉、「仕事に怖さを感じなければならない」、「臆病であれ」そして「安全器具装着は必ず2重のチェックをする」が印象的だった。そのような仕事の基本姿勢に至った背景を番組ではさらっと紹介していた。「過去に起きた社員の転落事故」という。その経緯、どの程度の事故なのか、いつごろのことなのかの説明はなかった。ただ、その事故以来安全点検手順を見直し、例えば屋上でのロープの固定状況を2度確認するなどのルールを励行するようにさせたという。

事故は作業手順通りに進めていく中でたった1つのエラーで起きることがある。例えば幾つかの点検の中で1つだけ点検を未実施のまま進めていったために起きることもある。事故後、「なぜ点検を省略したのか?」という問いかけに対しその答えは、その時の心理状態を説明するが、「うっかりしていました」とか「急いでいたため」など様々である。

その件に関連して以前、安全講習会などで度々引用したのが、点検を省略してしまう時にある種の心理的誘いが起きるということだ。「ベテランだからな!」「前も同じことをやったが大丈夫だったぞ!」「決まり通りやっていたら時間がないぞ!」などなど。これらを総称して、講習会のなかで、喩はあまり好ましくはないが「悪魔の囁き」と呼んでいた。これにはまず、それらが「悪魔の囁き」かどうかを見極めることが前提となるが、その上でこの「囁き」が聞こえたら、その時、「自分もしくは同僚が事故に巻き込まれるかどうかの境目と強く認識してほしい」ということを強調した。また、並行してこれらが「悪魔の囁き」として認識されるためには、日頃からの安全教育、集団での安全点検などで培っていくことも大切なことであることは言うまでもない。

今年、2月17日未明ハワイ・カウアイ島沖で実習中の函館水産高校の2年生が海中に転落したことが報じられた。ハワイ沿岸警備隊などの必死の捜索にも拘わらず行方はつかめず21日に捜索は一旦打ち切られた。その後の調べで、実習船「北鳳丸」では行方が分からなくなった時間帯に同乗していた乗務員が甲板の夜間監視装置の作動を入れ忘れていたことが判明した。夜間監視装置のスイッチをONにしておけば、夜間禁止されていた甲板への立ち入りを早期に発見でき、仮に転落したとしてもいち早く救助活動を始められたものと思われる。夜間監視装置は甲板に4か所設置されていたという。甲板に人が出入りすれば感知し、その信号が操舵室で警報を鳴らすというものだった。通常、日没後に決められた乗務員がこのスイッチをONにすることになっていたが、当日は入れ忘れていたという。

たった1つの安全装置の入れ忘れという事。但し、その夜に転落した2年生が立ち入らなければ何ら問題は起きなかった筈である。事故はたったそれだけで起きるし、反対に防ぐことも出来る。今回は、このような要因が重なって事故は発生したのだった。

ハワイ沖での水産高校実習船の事故としてまだ記憶に新しいのは、2001年2月10日に起きた宇和島水産高校の「えひめ丸」と米国海軍原子力潜水艦「グリーンビル」との衝突事故である。この事故は生徒、先生、乗員9人の生命を奪ったものだが、この事故原因にも様々な要因があった。まず、この日は潜水艦にとって通常の任務外のタスクが課せられていたということ。地元の民間人16人を乗せてハワイ周辺での潜航ツアー中であったということである。そのため、通常の勤務乗員の約6割のスタッフでオペレーションされていた。しかも操縦などのベテラン乗務員の多くが乗っていなかったのだ。その上、16人の招待客が狭い指令室(約5mx5m)に通常必要な10人の乗員と一緒に入って見学していたのだからその混雑ぶりは想像がつく。実は「グリーンビル」は浮上・衝突の1時間以上前から「えひめ丸」の存在を探知していたという。潜水艦にとっては通常の任務外の潜航中という非定常状態。しかも指令室が人で溢れるという操舵に集中できない状態で、決められた浮上手順が守られなかったことは容易に想像がつく。このような状態だからこそ「慎重の上にも慎重さ」が求められた筈だった。結果的に浮上を強行した艦長はまさに「悪魔の囁き」に憑りつかれてしまったということだろう。

今、各分野で「目利き力」というものが注目され、また、よく使われている。その多くは企業が新しい分野へ進出する、もしくはそのためのM&A時に「目利き力」の差が出るものというものである。その結果、競合他社での優勝劣敗が起きているのも事実である。

一方、そうした中で成功している企業にはある特徴がある。それは見かけの良い案件が出てきたとしても決して焦らず、永年培ってきた経験から地道に必要な時間を掛けて、十分に永年に亘り培ってきた「目利き力」で判断してから進めているという点である。

安全の基本である点検という作業にも「目利き力」の差が大きく出るのではないだろうか。「これは何かおかしい!?」「放置しておけば重大事故になる!」といった洞察力を従業員の多くが持つことがここで言う「安全の目利き力」だが、それまでにはそう一朝一夕に出来上がるものではない。しかし、その進行状況を日々観察し、進行段階に応じて必要な安全教育を施していけば決して無理な注文ではない筈である。「安全の目利き力」を付けていくのもまた、衰えさせていくのも正に企業トップの決意次第なのである。


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