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【2013.02】維持・保守への投資

都会に住む人にとって駅のエスカレーター、ビルのエレベーターなどは無くてはならないものの一つである。急いでいる時、もしくは疲れている時にエスカレーター、エレベーターが故障、点検などで動いていないとしたらどう思うであろうか。「また、点検している!」、「この疲れているのに歩かせるの!」と不平をいうのが一般的ではないだろうか。中高層マンションに住んでいれば毎月のエレベーター点検での不便さに慣れていると思われるが、「なぜ頻繁に点検しなくてはならないのか?」と疑問を持たれる方も決して少なくはないと思われる。

確かに、建築基準法では「所有者は建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなくてはならない」(第8条)と謳われていて、定期検査の規定(第12条)まで明記されている。これを受け、財団法人日本建築設備昇降機センターが指針を出し、「1か月以内ごとに点検その他必要な整備、補修を実施すること」が根拠となって点検・整備が行われているのだ。そのお蔭で私達は安心して昇降機を利用することが出来ることになっている。

そこまでのメンテナンスが行われている筈の昇降機であるが、人が挟まれたまま動いたりする事故は後を絶たず、昨年10月には金沢のホテルで従業員の女性がエレベーターに挟まれて亡くなっている。問題のエレベーターは「扉が開いたまま動き出すと自動停止する」戸開走行保護装置という2重のブレーキを付けなくてはならなくなった2009年以前のもので、既存不適格機だった。重大事故が発生し安全基準が厳格化されるものの、それ以前の設備装置に対して強制的に改修を義務付ける法律は殆どないのが現状である。

昨年12月2日に起きた中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故では9人の方が犠牲になった。天井版1枚重さ1トンのコンクリート製天井板を止めていたボルトが抜けて落下したものである。トンネルは35年前に完成したもので相当に老朽化が進んでいたものと思われる。また、コンクリートの天井板からトンネル最上部までの高さが5mもあるため定期点検が主として目視によるチェックだけで済まされていた。ボルトやその周辺のコンクリートをハンマーでたたいて確認する打音検査は緊急点検が行われた平成12年を最後に実施されていなかったという。事故が起きて初めて知ったことであるが、トンネル内部天井にこのような重量物がそもそも使われ、吊り下げられていたということを殆どの利用者は知らなかったのではないだろうか?いくら35年前の施工とは言え「この吊り下げた天井板が落下したら!!」という発想自体が設計段階でなかったとは余りにも恐ろしいことである。この事故は日曜日早朝の上り車線で起きたものだが、夕方の混雑している時間帯に発生したとしたらさらに多数の車両を巻き込み、大惨事になっていたものと思われる。

さて、日本では裏方と呼ばれる仕事に対する評価が一般的に低い。裏方とはたとえば製造業であればライン、設備の保守点検部門のことであり、日々生産を支えている。道路、トンネルのような構築物の点検・保守も非常に重要な仕事である。筆者の経験から言えば、そこで働くスタッフの皆さんは誇りを持って日夜奮闘されている。一方、企業のリストラ、経費削減をもろに受けるのもこのような部門である。保守部門の仕事は一般的に地味であり生産性向上に直接寄与する訳でもないため、経営サイドから見ればその価値そのものが分かりにくく、コストカットや外注化が進められ易い。しかし、そのつけはとてつもなく大きく伸し掛かってくることもある。保守業務のアウトソーシングは一見合理的ではあるが、外注化がさらなる外注を呼ぶことも珍しく無く、その結果、発注部門と協力会社間でコミュニケーション不足による作業手順などの齟齬が生じやすい。それが同一の部門同士であれば暗黙知として従来から受け継がれてきたことで回避できていたものが出来なくなりやすいのだ。

2007年に茨城県の化学プラントで起きた火災事故は保守作業中の協力会社社員4名の命を奪った。4名はいずれも4、5次外注先の社員で配管の仕切り板を交換する作業を行っていた。配管内の仕切り板を交換するに当たって安全の観点から細かい作業手順が必要であったものの、通常の作業では元弁を閉めるというところまで踏み込んだものとはなっていなかった。その結果、弁が開いて冷却用油が漏出発火し、付近で作業していた4人を巻き込んだものである。元弁を施錠し、かつ圧縮空気で弁が開くことからスイッチがONにならないように防護措置を施してから実施しなくてはならなかったのだ。それらを省略して作業した原因はプラント会社の作業マニュアルには弁の施錠が定められていたものの、現場の作業員のチェックリストには記載されていなかったためである。

この化学プラントでは事故の発生から結果的に長期間の停止状態を余儀なくされた。その損失は余りにも大きい。今、日本のプラント始め製造業の設備年齢は老朽化が加速している。最近事故が目立つ鉄鋼メーカーも主力工場は操業から60年という。もとより以前から装置、配管、様々な部分に大掛かりな改修を実施している。しかし、その現場で作業している多くは外注先の社員である。作業する人々は装置全体の仕組み、危険性についてどれ程までの教育を受けているのだろうか。益々必要となる保守・点検部門に今、必要とされているのは十分な経験を積んだ自社の作業主任者の配置と保守点検にかける十分な予算ではないだろうか。一時的に費用が嵩んだとしても、全体からみれば一番安い製造コストになるのではないかと思われる。企業トップは保守・点検部門の重要性を再認識し、そこに思い切った人財と投資をかけて欲しいものである。


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