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【2012.04】想像力が安全を高める

昨年3・11大震災と原発事故に関連して「ブラックスワン」という言葉を改めて考える事が多くなった。ここで言う「ブラックスワン」とは映画のタイトルになったバレエ白鳥の湖の黒鳥とは別のもので、本来有りえない事態が起きてしまうことを意味するものである。話は17世紀に逆戻る。ヨーロッパには当時、白鳥はその名の通り白い白鳥しか居なかった。人々もすべての白鳥は白いものと信じていた。しかし、オーストラリア大陸に漆黒の白鳥がいることが分かり、人々は大変驚いた。それ以来、考えられないことが実際に起きた時にこの表現を使うようになった。

福島第一原発事故も「ブラックスワン」である。「本来有りえない」を「起こりえない」事故と言い換えれば事故後、一様に関係者が「想定外」という言葉で言い逃れた真意を量りうる。日本では古来、人々はリスクに対峙することを避けてきた。それは2つの行動から言えよう。1つは「起きて欲しくないことは深く考えないし、想像もしたくない」ということである。それはいみじくも福島第一原発事故で繰り返し言われた「想定外」ということからも分かる。「大津波まで考えなくてもいいだろう」は最初から「想定しないこと」を前提に計画が進められていたことを意味する。また、運転開始後も何度か「全電源喪失の事態を考慮すべし」との提言を受けたものの、経費削減等を理由にすべて退けられた。利益拡大を得るには、売上高がほぼ一定ならば更なる効率化、人員削減、もしくは安全への投資を減らす事しか方策はない。安全への投資を減らしていた事に関しては、東京電力福島第一原発に以前勤務していた人達の証言からも明らかである。「少しでも経費を抑えろ」は至上命題だったのだ。

2つ目は同業他社で事故があった時や自社もしくはグループ企業で幸いにして重大事故には至らなかった後でも、今後どのようにしたら類似の事故を防ぎうるかと真剣に考え行動する視点が十分でないという点である。ハインリッヒの法則を持ち出すまでもないが、重大災害と軽微事故とを何が分けたかということに関しては実に紙一重なのである。福島第二原発も第一と同じように地震、津波の被害を受けた。第二原発は第一の南約10キロメートルに位置している。ここにも9メートルの大津波が押し寄せ、4機ある原子炉の内3機の冷却用熱交換機を回すポンプが使えなくなると同時に通常電源、非常用電源も停止した。幸い、外部からの高圧電源1回線が生きていたため、ポンプの交換を急ぐとともに生きていた1回線から各原子炉へ架設電気ケーブルを引くことにした。しかし、その長さは半端でなくケーブル用資材の手持ちがないため、急いで新潟県柏崎刈刃原発から自衛隊のヘリなどを使って運んだ。その時点で福島第二原発には金曜日で2,000人の作業員がいたため、全員総出でケーブルを繋いで、冷温停止状態まで持っていくことができたのだ。外部電源がなかったら、また週末で多くの作業員がいなかったらなど、1つでも欠けていたら第一原発と同じ状況になっていたと思われるし、その影響は甚大になっていた筈である。

一般論にもどるが、企業でも軽微事故を放置し、抜本的な対策を採らないと潜在的な危険要因は必ずや将来牙を剥いてくる。他社の事故や自社のヒヤリを警告として捉えられるかどうかはリスク管理に関しては「天と地」程の差があるのである。

米国にNRC(アメリカ原子力規制委員会)という公的機関がある。NRCが全米にある原発への指導・規制を実施している。NRCは1979年のスリーマイル島事故後に管理ガイドラインの規制を強化した。また、2001年の9・11ニューヨークワールドトレードセンターでのテロ後には、テロリストの乗った航空機が原発に衝突した場合まで想定し、その対応策まで義務付けしている。その具体的内容に関しては非公開であるが、原発事故の影響を最小限に抑える手段として全電源喪失(SBO)時にも一定期間バッテリー駆動装置の運転が含まれているものと言われている。どうして米国の機関は先手先手で対策を実行できるのか?その考え方の根底には少しでも可能性のあることを想定すべしとの理念があることと、万一それが発生した場合でも被害拡大を最小限に抑え込むというポリシーがあるからである。

さて、「事故防止に何が一番必要か?」と言えば、真っ先に「想像力」を挙げたい。一方、現代社会を生きていく上で私たちはますます想像することをしなくなっているのではないだろうか。その傾向を助長しているのはIT化と思う。携帯電話、スマートフォン、ゲームの氾濫。ボタン操作1つであらゆる情報が手に入る。その過程で抜け落ちるのは「なぜ?」という問いかけである。最近、「なぜ?と思った事ありますか?」と聞けば多くの人は「あまり無い」と応えると思う。また、その先にある「こうすればこうなるだろう」といった思考プロセスもスキップされることになりやすい。企業活動の現場でも、安全のルールから逸脱している場面が少なからずあると思われるが、それらの多くは見過ごされやすい。「なぜ、ここにこの資材が置かれているのか?」のような問いかけと「このような状態を放置すれば・・」といった想像力を働かせた視点を安全管理者のみならず、一般の作業員まで共有することが大切である。

それには、一日に一度立ち止まって振り返りをすることをお勧めしたい。お勧めするのは、1日に1回30秒間、一日の振り返りをすることである。入浴中、睡眠前などに「今日の仕事での反省点」、「こうすれば良かった」などの振り返りである。この積み重ねが、不安全状態・行動を見抜き、改善する慧眼となる。それは、ますます想像力を高めることになり、「安全」と「危険」との線引きを厳しくし、結果的に社内での不安全状態・行動をなくすることに繋がるのである。


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