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【2011.12】手順書を実効性あるものにする

航空ショー以外では絶対に有ってはならない背面飛行が乗客を乗せていたジェット機で起きた。今年9月6日、乗客112人を乗せた那覇発羽田行き全日空ボーイング737・700機が浜松沖高度1万2500メートルから急降下し、上下逆さまで約30秒間飛行した。最初、機体はゆっくり左に90度近く傾いた後、一旦元に戻ったもののまた、左に傾き殆ど背面状態で急降下(約1900メートル)していった。結果的に副操縦士が機体を立て直し、数人の乗客が体調不良を訴えるに留まったものの、一歩誤れば大惨事になっていたと運輸安全委員会は指摘している。この事故のそもそもの発端は、機長がトイレに立ち、戻る時に副操縦士がドア解除スイッチでなくエルロントリムと呼ばれる主翼端についている舵(エルロン)の調節スイッチを取り違えて操作したためと推定される。この2つのスイッチは2つの操縦席の間にあり、操縦席に座った状態では丁度肘の後ろに位置していて、操作時に目視確認できるものではない。2つのスイッチは上下にわずか数センチ離れて付いている。上にあるのがエルロントリムで下がドアの解除スイッチである。2つのスイッチは大きさが違う(ドア解除の方が約半分の大きさ)が、手探りでの操作では間違うこともありうる状態といえる。スイッチの取り付けなどに関して操縦席の設計に問題が無い訳ではないが、実際の飛行に直接影響の少ないものは狭い空間では端に設置されることになるのも致し方ないことかも知れない。しかし、エルロン自体は補助舵であり、機体を微調整する働きのものだが、これを操作すると操縦桿を動かしたことと同じ状態になるのだという。それが操作する時は手探りのように2つのスイッチを識別しながら行うのであれば、誤操作リスクも当然高くなると言えよう。まさか、ドア解除スイッチを操作する場合の「手順書」などは存在しないと思うが、有ったとしても1回の飛行中に1回触るか触らないかの頻度ではイチイチ確認してからという手順を順守させることは難しいと言わざるを得ないだろう。 安全にかつ、効率よく作業を進めるために様々な作業に関しては手順書が作られている。一般に、作業手順の作成に当たっては作業の詳細を熟知している現場管理者が中心となって作成するが、そのポイントは、

作業の実情に即していること

表現が具体的であること

安全のポイントを外さないこと

詳しすぎないこと

異常時の措置について定められていること

が挙げられる。操縦席ドアロック解除について仮に「手順書」が存在していたとすれば、その内容も上記に即したものでなくてはならないだろう。例えば、ドアオープンの要求があった場合(恐らくノックと思われる)、

本人かどうかの確認をし、

慌てずに、2つのスイッチを手で確認してから

下の小さい方のスイッチを操作する

万一、エルロントリムを操作した場合には・・・

のような項目と手順を最低限踏まえなくてはならないだろう。しかし、根本的に、このようなヒューマンエラーによる事態を防ぐには、ドアスイッチを目視確認出来る正面に取り付けるか、乗務員にドア開閉のカード(もしくは暗証番号)を携帯させてカード等による操作に切り替えた方が得策と言えよう。

 さて、東日本大震災による福島第一原発事故で、10月24日に原子力安全・保安院は1号機で重大な事故(シビアアクシデント)が発生したときに使用する手順書と実際に実施した操作の比較表を公開した。比較表によると、地震発生直後の原子炉緊急停止、水位の確認等、ほぼ手順書通りの対応だったが、その後の大津波によって手順書で想定していなかった電源盤の水没により中央制御室での操作が出来なくなり、原子炉がどのような状況にあるのかさえ把握できなくなった。手順書には消火系の配管を使った注水冷却や格納容器のベントなどを指示していたものの、弁の多くは電動であり作業は難航した。このように手順書そのものが機能しなかった理由の一つは重大な事故を想定していたにも拘わらず、すべての手順が通電を前提にしたものであったからである。つまり、割引された重大さに対応した内容であったのだ。一般の作業手順と異なり、緊急時の手順作成に当たっては、通常の動力、防御設備等が喪失した状態を想定しなくてはならない。「まさかここまで!」という最悪の状態に陥った場合でも、「損害、被害の拡大をこのラインでくい止める」といったポリシーが必須である。ともすると、その作成と実行には大きな予算と訓練が必要となり、始めから決められた予算等での逆算した形になりやすい。しかし、そのつけが対賠償、社会的制裁等によって何千倍、何万倍となってくることだけは避けなくてはならないのだ。

最近、東南海地震発生が予測される地域にある企業の調査を実施した。立地は海岸から僅かの距離であり、巨大地震が発生し、震源が近ければ10分程度で大津波が襲ってくると予測される。建物の耐震等の補強はほぼ完了したものの、人的被害を最小限にとどめるためにその企業では部署ごとに順番に月1回の頻度で大地震・津波を想定した避難訓練を実施している。実施後には毎回、訓練の習熟度と課題をフィードバックし、次の訓練に向けた修正を重ねている。避難にも手順がある。現在の手順が最悪の状態を想定したものか? また、訓練度は十分か?更に、その評価による見直しは十分か?などなど。今、多くの企業に「緊急時対応手順書はありますか?」と問えば、「手順書はあります。作成しました」と答えるだろう。しかし、実際の最悪時にそれが機能しなくては画餅に過ぎない。最悪のリスクに備え、あくまで慢心せず、緊張感を持続してソフト・ハードともに手順書の改善と訓練を重ねて欲しいと願っている。


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