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【2011.08】緊急時の行動で分かる企業の実力
(マニュアル偏重主義からの脱却)

人生には相手を選べる場合とそうでない時がある。選べないことで自身の命まで託さなくてはならないものの一つは航空機、電車などに乗る時である。乗客にとって安全にそして定刻に目的地まで運んでくれることは当然のことと思うものの、いざという事態に陥ればいかにその場から逃れるかを必死で考えなくてはならない。

今年5月27日に発生したJR北海道の石勝線トンネル内での車両火災は長さ約700mトンネルのほぼ真ん中で発生した。釧路発札幌行の特急スーパーおおぞら、6両編成の最後尾車両付近から出火。列車には乗客240人が乗っていた。脱線停止後、車内の照明は消え、乗客は車内放送での指示を待っていたが、放送は「調べていますのでそのままお待ちください」、「車外には出ないで下さい」を繰り返すのみ。そうこうする内に煙が充満してきたため、乗客は非常コックを使ってドアを開け、真っ暗、そして煙が充満していたトンネル内を300m以上逃げたのだった。幸い、死傷者は出なかったものの、逃げた乗客は口々に「指示に従っていたら死んでいた」とJR北海道の対応の悪さを非難していた。一つ間違えれば大惨事になっていた筈であった今回の事故の要因を見ると、当事者である車掌と札幌のJR指令センターの双方にあるようだ。車掌は車内に充満し始めた煙のみに気をとられ、その状況を指令センターへ報告し指示を仰いだ。指令センターではまさか脱線、火災発生しているとは考えず、二次災害の防止を第一に先頭車両への誘導を優先し、ドアを開けて列車から車外への避難を認めなかった。JR北海道の手順書(マニュアル)では乗務員が火炎を目視して初めて「車両火災」となる。いくら煙が充満しても「火災」と認識しないといった真におかしな規定と言わざるを得ない。ただ、この車掌はマニュアルに従って、また上司である指令センターの指示どおりに行動したことは事実であった。

マニュアルは短期間の教育でスタッフを指示通りに動かす実に便利なものである。一方、そのような教育を受けたスタッフは「マニュアルに書かれてあることはするが、書かれていないことをすることはない」といった行動をとりやすい。社内研修、教育等ではマニュアルに書かれてあることを忠実に実行できることを第一に据えるものの、「なぜそうするのか」、「どのように応用すればよいのか」に関して十分に討議する時間は取られていないのではないだろうか。スタッフはマニュアル通りに動きさえすれば良い評価が得られると勘違いし、その結果、余計な事は何も考えない「マニュアル人間」を大量に生み出すことになる。今回の車両火災でも車掌自身の判断↓行動は無く、あくまで手順書に書かれていることを忠実に行う事しか出来ない「マニュアル人間」の為せる結果であったと思われる。

一方、2009年1月15日にニューヨーク、ハドソン川で起きたUSエアウェイズ機の不時着は機長の冷静、沈着な操縦によって150人の乗客、5人の乗務員全員が助かった事故であった。当機はラ・ガーディア空港離陸直後に2つのエンジン(エアバスA320双発ジェット機)が大量の鳥を吸い込んだためエンジンが停止し、機体維持が出来なくなった。空港管制は川対岸にある空港への着陸をアドバイスしたが、サレンバーガー機長はそこまでたどり着けないと判断し、ハドソン川への不時着を決断する。機長はそのようなパニックに陥りそうな局面でも不時着の衝撃を出来るだけ抑えるため、川の流れに沿って機体を南下させ、エンジン停止から約3分後に川の流れに乗せるように着水した。結果的に機体の衝撃は抑えられ、損傷は後部の壁だけで、乗客ら全員が脱出できた。更に機長は乗客・乗員全員が退避したことを2度確認した後、沈み始めている機体から最後に脱出している。この冷静な判断と行動はサレンバーガー機長の経歴に負うところが大きい。機長は、空軍出身で30年近いフライト経験があり、またグライダーをはじめ数多くの機種の操縦経験があった。事故後、機長は「あくまで緊急時の対応に沿ってやっただけ」と振り返っていたが、状況を的確に判断することと、どうしたら衝撃が少なくて済むかというような難しい決断を瞬時に行うことはマニュアルには無い部分が大きかったのではないだろうか。

さて、マニュアル至上主義と思われていた企業に「実は何もマニュアルらしきものがない」といった衝撃的な記事が載っていた(日経ビジネス2011・6・27)。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド社のことである。リゾートで働く2万人のスタッフの9割がアルバイト社員(キャスト)であり、かつ直接お客様と接するスタッフである。そのアルバイト社員に対する接客マニュアルは存在しないのだという。企業の理念をベースに自ら考え、どうすれば良いかを実行しているそうだ。3・11の震災当日も多くの来園者が帰宅困難になる中、多くのキャストが残り、食糧や衣料品を笑顔で配っていたという。

マニュアルの便利さと裏腹にその硬直性を指摘してきた。マニュアルに書かれてあることが企業で起きる事象すべてに対応できるものではない。マニュアルから離れたことが起きた時にどう対応するのか?を一人一人の社員が常に考え続けられることが大切である。それには、日常の業務で「なぜそれをするのか?」「なぜそれを行ってはならないのか?」を組織全体で考える社風を作り上げることである。今の時代、何が起きるか分からない。

企業の本当の実力は緊急事態が発生した時にその企業がどう対応したかで分かるものであり、上辺だけの対応はすぐに馬脚が露呈する。また、それが怖いのは、その時に対応した社員のたまたまの行動でその企業の評価が下されてしまうからである。そうならない為にも一人一人の社員へのきめ細かい教育もさることながら、現場社員に緊急時の権限委譲をある程度認めるルール作りが求められるのではないか。そして、その結果がどうであれ全ての責任はトップが引き受けるという強いリーダーシップが必要条件であることは言うまでもないだろう。


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