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【2011.04】自動化をどこまで進めるか

昨年5月に富士重工業がレガシィに搭載した「アイサイト(Ver2)」が話題になっている。内容は、自動ブレーキで車両を停止させ、前車との衝突を回避するプリクラッシュブレーキと前車との距離を保って加減速を自動的にコントロールするクルーズコントロールである。これらは自動車事故の防止に役立つものとして期待されているし、今後、高齢化が益々進み、高齢者ドライバーが増えてくる日本にとってはこのような自動車の安全性向上の自動化は事故防止に役立つに違いない。このように車のシステム自動化は進化し続けている。将来GPSを活用したオートクルーズ、つまり目的地をナビに入力するだけで自動的にドライブしてくれるようなシステムが出てくることも夢ではなくなってくるに違いないだろう。一方、便利さを追求することも果たして「どこまで自動化したらよいのか?」という命題を人間は背負いながら進まなくてはならないことを忘れてはならない。

今年1月17日午前、東北新幹線などJR東日本管轄の5つの新幹線で運行トラブルが発生し3時間近く止まった。原因は当日午前7時ころ東北新幹線の新白河駅で積雪のためポイントが切り替わらなくなるトラブルが発生したことに始まる。新幹線の運行指令室では、当時走行していた上下線24本の列車を最寄りの駅で停車するようにし、同時に17日のすべてのダイヤの変更を実施した。JR東日本では運行管理システム(通称コスモス)を1995年に開発、運用開始しており、このシステムでの修正作業を実施した。しかし、開発当初に比べ、運行本数は4割も増加していたため一度に大量の修正データを入力したことがシステムのトラブルを招いた。その結果、コンピューターが一定時間内に処理できる上限数を超えたためモニターに表示されなくなってしまった。運行指令室責任者は原因不明のトラブルと判断、8時23分に5新幹線(東北、上越、長野、山形、秋田)の全列車の運行を停止させた。コスモスは2008年にバージョンアップされ、ダイヤ予測機能を従来の4時間から終日予測できるようにしたが、最大処理能力は開発当時のままだった。運行はその後まもなく復旧したものの大きな課題が残された。このトラブルの原因は第一に処理能力の過少に気づかなかった点であるが、モニターに一時的に処理能力オーバーのため表示されなくなったことを運行指令部門スタッフが「システムの不具合」と考えたことである。実は、JR東日本では運行担当部門にシステム表示の詳しい仕組みを開示していなかった。単位時間当たりの処理能力に上限があることを知らせていなかったという。その理由をJR東日本では、「指令員に上限を知らせると上限を気にしながら作業をするようになり、ダイヤ編成に集中できなくなるから」と述べている。つまり、運行指令員の仕事は決められた作業のみを実施することであり、システムの全体像を知ることは余計なことというらしい。トラブル発生時には指令室のモニター22台すべてで各列車の到着予定時刻を示す線が消えた。それを見た指令員はさぞ慌て、何が起きたのかわからないといったパニックに陥っていたと想像できる。指令員の中に1人でもシステムに精通したスタッフがいて、その状況を客観的に判断できたとしたら、このトラブルを回避出来たにちがいない。コスモスのような自動運行管理システムが開発される以前は指令室の担当者がすべて手作業でダイヤの組み換え、乗務員の変更・手配、ポイントや信号の切り替えなどを実施していた。従って、この複雑な作業を滞りなくやり遂げるのは職人的技術と経験が必要であった。この現場の経験と勘に頼った作業を自動化したのがコスモスであった。一方、当時、JR東日本の開発担当者の中には「このような自動化の進展は、半面で異常時における対応能力を妨げる」との懸念を示す意見もあった。

さて、作業効率の追求はもとよりヒューマンエラーを取り除くことから様々な分野で自動化が進められているが、過度の自動化は人間が持っている「何かおかしい」といったシステムやハードを疑うというプロセスをなくす面も見逃せないし、更に異常時における緊急対応能力を削ぐということも指摘されている。では、どこまで自動化したらよいのか?ということについて幾つかの指針があるので紹介したい。

NASA(米国航空宇宙局)では自動化しない仕事として以下の4つを挙げている

作業者が特有のスキル、生きがいを感じている仕事

非常に複雑であるとか、理解困難な仕事

自動化によって作業現場で覚醒水準が低下するような仕事

自動化が不具合の時、作業者が解決不可能な仕事

た、ジェット機のコックピットは自動化の塊みたいに思われるが、ボーイング社では自動化の考え方として、「自動化はパイロットの手助けをする手段であり、パイロットの操作をオーバーライド(無視する、拒絶する、くつがえす)ものであってはならない」と定めていて、人間工学またヒューマンエラー防止を重視し、すべてのオペレーションを自動化している訳ではない。

いずれにしても、自動化の進展は避けて通れないものであるが、NASAの例にあるように、作業者の環境が豊かになり、作業現場の覚醒度が上昇し、スキルを補完するようなものであることが望ましいのである。従って、自動化の選択、決定においては、設計・デザインの時点から現場作業者を含めた検討を実施し、どこまでの自動化について真摯に考えなければならない。安易な自動化は思わぬ落とし穴を包含していることを銘記しておきたい。


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