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【2011.02】失敗の教訓を含んだ技術の伝承

昨年の出来事で特筆すべきものの1つが小惑星イトカワへの着陸と無事に地球へ帰還した探査機「はやぶさ」の成功である。2003年5月に打ち上げられ、2年半掛けて何とかイトカワへ着陸し、昨年6月幾多の困難を乗り越え、満身創痍ながら自身は大気圏突入で燃え尽きカプセルだけを届けてくれた。その軌跡をたどると成功の裏には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)川口淳一郎教授はじめ多くの方の弛まない努力、チームワークそして開発当初から設計に織り込んだフェイルセーフの賜物である。「はやぶさ」の設計に際しては事前に幾つかの故障、トラブルを予想・見越していた。例えば、姿勢制御装置の故障、イオンエンジンの燃料切れ、電池切れによる通信途絶などを想定し、その場合にシステム相互のバックアップや自動復旧で乗り切れるように工夫されていた。運航中に実際、姿勢制御用装置3基中2つが故障、バッテリーは放電しきっている、化学燃料エンジンの故障等によってコントロールを失いかけたがその都度何とか乗り切っている。驚くべきことに姿勢制御装置の最後に残された1基が故障した場合の対策も用意されていたという。正に、万全の対策が功を奏したものといえよう。また、その裏には一見過剰とも思えるエンジン推進剤(キセノンガス)を搭載していたことも挙げられる。これは以前、火星探査機「のぞみ」がぎりぎりの燃料搭載で失敗したことの教訓からであろう。なお、「はやぶさ」プロジェクトはJAXAを中心にNEC、IHI、日立製作所、富士通、三菱電機、三菱重工業など実に99社がそれぞれの分野で参画し構成されていた。カプセルが帰還してから、リーダーが漏らした一言、「はやぶさの運用が終わった瞬間から技術の離散、風化が始まっている。次の計画がなければメーカーも技術者を他の事業に回し、ノウハウ伝承の機会も失われる」は技術の伝承の重要性への警鐘として含蓄のある言葉であった。

2007年問題、いわゆる団塊世代の大量退職によって技術の伝承が途絶えてしまうということが言われてからはや3年が経過した。実際、毎年数10万人規模の団塊世代が職場を後にした。多くの企業では技術の継承を重要視し、ベテランの動作、コツなどを文章化、もしくは映像に残して後輩に伝える努力をしているが、問題は何を残し、何を後輩に受け継ぐかという点にある。ただ闇雲に記録し、データベース化しても後々使われずにお蔵入りとなりやすい。それに似ているのが「失敗、トラブル事例をその後の再発防止にどう活用するか」ということである。原因調査、再発防止策をまとめ文章化し、もしくはデータベース化までしていつでも閲覧できるまではよかったが、その後継続して生かされていないところを多く見る。昨年、高速増殖原型炉「もんじゅ」のトラブルがあった。昨年5月に14年半ぶりに運転を再開したが、5月中旬に制御棒の挿入が正しくできないトラブルがあった。トラブルの原因は制御棒を挿入させていくに当たってボタンを長押ししなくてはならないのに、長押ししなかったためといった初歩的ミスであった。原子力研究開発機構の発表では操作方法を熟知していない運転員によるミスとしているが、もんじゅは95年のナトリウム漏れ事故から14年余り停止していたため、操作経験のない運転員が全体の8割を占める構成になっていたという。ここでも技術の継承という問題に突き当たる。その後、もんじゅは昨年8月に炉内中継装置を吊り上げ作業中に炉内に落下させ、その修復等で機構では運転再開を当初より大幅に遅らせた2013年内に延期すると発表した。

「何が本当の原因だったのか?」については当事者の資質、環境要因、直接要因等多くが複雑に絡み合っていることがある。それら1つ1つをひも解いていく過程で原因と解決策の優先順位が見えてくる。ポイントはそれをどのような形にしておけば後々使われやすくなるかという点である。そのヒントは、実際にプロジェクトや以前トラブルを起こした類似の作業を行う前にリーダーがその失敗のデータを生かしたいと思ったとき、どのような形にしておけば役立つのかを考えることから始まるのではないか。一方、ベテランはこの辺りのノウハウを自然と身に着けている。従って、それを逐次文章化することは煩雑だし、難しいと考えている。しかし、そのスキルがトラブル、事故になる直前に回避させているのである。それを一言でいえば「予兆を感じ取る」能力とでも言うのだろうか。そのような能力は現場で永年に亘って培ってきた経験やヒヤリなどを教訓として育まれてきた。それを経験の浅い後輩に伝えていくには、分かりやすい形にしてあげる必要がある。

事故、トラブルには夥しい類似のケースはあっても、全く新しい事例というものは無いといっても過言ではない。決められた作業手順、防護用具などを使用していれば余程の悪条件が重ならない限り事故に繋がることはないだろう。しかし、作業は必ずしも予定通り進むとは限らない。このような状態を「非定常」と呼ぶが、事故・トラブルは得てしてこのような時に起こる。「スタッフが足りなくて忙しい」↓「作業の効率化を上げるために同時並行作業をする」↓「いちいち確認するのが面倒」などのような状態である。このような状態になったとき、作業に従事しているスタッフに「何かおかしい」といった気づきをしてもらうのが「過去の事故・トラブル」からの教訓である。と同時に、作業リーダーにもそのような状況になる前に、当然気づいてスタッフに指示しなくてはならない。

ベテランが抜けることは、団塊世代に限ったことではない。組織である以上、世代の交代は続く。ここで「技術の伝承として何を伝えるか」という点で言えば、永年多くの先輩によって培われてきた文化ではないだろうか。この文化は技術的なことに留まらず、安全の分野でも正しく伝承されていくべきものである。その文化のもとになるのは、日々の技術、安全に対する全社員の取り組む姿勢とプライドにあることは言うまでもないだろう。

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