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【2010.04】エラーを出来るだけ防ぐ

「人は人として生きていく上でエラーを完全に防ぐことは出来ない」。この言葉を人間工学の高名な先生から聞いたことがある。安全を追求する身にとっては皮肉であり、また人が避けることの出来ない宿痾でもある。とは言え、ちょっとしたエラーが元で大事故になり、多くの人命が失われている。エラーを無くすことは出来ないものか。エラーを防ぐ方法として緊張を与えることがある。しかし、私たちは常に緊張し続けることは出来ない。緊張を強いる作業をさせていても、そのような時ですら無意識の内に手を抜いている。

大脳は意識すべきところと無意識で良い場合とを使い分け、極度に疲労しないことを防いでいるからである。問題は意識すべきところをうっかりやり過ごすケースである。例えば、毎日同じ動作を続けていると無意識で決まったことが出来るようになる。朝起きれば、洗顔、歯磨き、着替えなどはその典型といえる。しかし、出勤前の行動の中に意識していないため外出した後で、「アイロンのコンセント抜いた?」、「石油ストーブ、確か消したかしら」など不安になることが多い。このような場合の多くは、実際にコンセントを抜いて、またストーブを消火させているが意識的な行動が伴わないため記憶に残らないのである。特に考えたり、意識しなくても身体が自然に連続する動作をこなしていくことを「行為スキーマ」というが「行為スキーマ」も時として「うっかり、ポカ」を招くことが多い。企業はその対策として、マニュアルによる作業手順の厳守、複数のスタッフによるチェック態勢などを実施している。しかし、その間隙を縫うようにエラーは発生する。

今年1月29日に東海道新幹線のパンタグラフの不具合から架線が切断され、3時間半に亘って運行が止まった。品川 小田原間で停車した5本の列車の乗客3100人が缶詰になり、車内の空調が切れ、乗客にトイレの使用も出来ないという多大な苦痛を与え、約15万人に影響が及んだ。この事故についてJR東海は「初歩的なミス」で点検後の補修作業でパンタグラフのボルトを4本とも付け忘れたことが原因だったと謝罪した。点検・補修作業は2日前に行われた。目視によってパンタグラフの架線に接触する舟体という部分に劣化が見つかり、交換となった。作業には3人が当たった。交換後に舟体をパンタグラフに固定する4本のボルトを取り付けるのを忘れたという。JR東海は謝罪会見で、パンタグラフの部品交換の手順を項目ごとにチェックする作業シートを作成していなかったことを認めた。恐らく、それまで部品の交換の手順は大まかなものがあったものの、厳格なものとは言えなかったことが判明した。この事故により、今までの新幹線車両点検・補修の大体のレベルが分かったのではないだろうか。つまり、通常のメンテナンスは作業員の経験と勘が頼りで、安全の根幹を構成する部品交換に際しても科学的なチェック態勢が敷かれていなかった。時速300kmで走行する車両にしてはそのエネルギーポテンシャルと不一致なメンテナンスが行われていたという事実である。今回のボルトの件に関しては、さらに疑問がある。舟体を交換する場合、それを固定するボルトも新しいものと交換するのであろうかという点である。舟体だけを取替えて、古いボルトで締直すのであろうか。また、ボルトを新しく交換するのであれば間違わないために新旧の区別をどのようにしているのだろうか。新旧のボルトを区別できるボックスにいれ、かつボルトの頭にペンキで識別するなどの処置が行われていたのだろうか。更に大きな疑問として、作業に当たった3人とも付け忘れに気が付かなかったという点である。作業員の訓練度、資質もさることながら、その背景としてメンテナンスがどのような状況で実施されていたのかという点もある。深夜帯で疲労が溜まり、更に時間的に切迫した状態ではなかったのか。点検の車両が次の運行までに時間的な余裕が無い状況だとしたら、それらも事故の遠因として見なくてはならない。つまり、事故の再発防止策として単に作業シートなどマニュアルの整備・確認といった点だけに結論づけさせることの危険性を指摘したいのである。

チェック新幹線も昭和39年の開業当初は時速200km程度で運行していた。今は300kmである。エネルギーは格段に違う。その点、航空機に匹敵するようなメンテナンス態勢も求められているのではないだろうか。

さて、JRも以前はホームで駅員が電車の進入、発車時に際し、「指差呼称(ゆびさしこしょう)」といって「前方よし」「後方よし」という掛け声とともに指さしで安全を確認していた。ところが、今では駅員自体がホームにいることが少なく、まして、指差もあまり見ることが無くなっている。指差呼称の利点は声に出して、現場の安全を確認することである。「声に出す」ことで意識が喚起され、目視によって安全かどうかを確認できる。いわば一人で意識的に二重の確認が出来る。従って、後からでもその場を思い出すことが容易になるのである。

科学の進歩に人がどこまで付いていけるかという点から言えば、マニュアル、チェック態勢がいくら高度化・複雑化しても人間の固有能力自体に限度があるためそこにエラーが発生する余地が生じやすい。その防止には出来るだけシンプルでエラーを防ぐ取組みが求められている。その点から言えば、「指差呼称」というシンプルなものに意識的な注意喚起を期待することができる。今回のJRの件も、「ボルト締め付けよし」という指差呼称が職場で組み込まれていたならば必然的に防止できた筈であった。

今一度、家庭、職場でも、特に意識しなくてはならない作業には「指差」で「安全よし」の掛け声をかけることをお勧めしたい。これが実践的でかつ、効果的な「エラーを出来るだけ防ぐ」方策であるからである。


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