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会社で役立つリスクマネジメント

【2009.12】リスクマネジメントに見るプロとアマとの違い

趣味の話で恐縮ですが、将棋の番組を良く見る。名人戦のようにBSで放映されていれば経過が気になるし、竜王戦のようにネットで逐次配信されていれば目が離せない。プロの将棋の面白さは一手ごとの捌きかたもさることながら勝敗が決まった後の振り返りにあると思っている。プロ棋士の対決では対局後必ず両者が初手から駒を進めていって、展開が難解な局面では様々な手を指しあいながら研究しあう。これを感想戦という。プロ棋士の重要な振り返りの場であり、かつ研究の場でもある。プロの感心するところは感情的な勝敗の行方を差し置いて、勝者敗者ともに真摯に対局を振り返り、その局面でもっと良い手がなかったかを研究しあうことにある。一方、アマチュアでは何よりも先に「勝った、負けた」が気になる。ここがプロとアマの差であろう。

丁度1年前、熊本に出張の折、立ち寄ったホテルは10日程前にそこで竜王戦の第4局が行われた所であった。渡辺竜王に羽生名人が挑戦していた第4局目で、羽生名人の3連勝で迎えたところ、両者ともに4勝すれば永世竜王という称号が与えられる大変重大な局面であった(結果的にはこの後、渡辺竜王が続けて4勝し防衛した)。

その時、ホテルの支配人から良いものがあるのでと言われ見せて頂いたのが封筒に入った「封じ手」であった。ご承知と思うが、名人戦などは2日かけて指されるため、1日目の終わりの時点で次の手を指さないで、紙の盤上に赤線で示して封筒に入れ、立会人等が署名し厳重に保管される。翌日、立会人が封を開いて読み上げ、2日目が始まるという次第になっている。この「封じ手」の現物、初めて見たが対局の雰囲気が伝わってくるような感覚を覚えた。このようにプロの戦いは厳格なルールに基づいて行われ、また、勝敗が決した後もその場で弛まぬ研究をし続けている。このようにルールを守ることを私たちの世界では「コンプライアンス」といっている。

さて、1月半程前に判明したJR西日本の福知山線脱線事故調査報告書漏洩問題で、公表前に報告書を入手、また報告書に書かれる情報の収集を事前に組織ぐるみで行っていたことが分かった。いずれも報告書に会社側に不利な情報が書かれることを未然に防ぎたいということによるが、組織の中の「事なかれ主義」極まる思いである。107人の命を奪い、今もって後遺症に苦しむ多くの乗客、遺族の思いを逆なでする行為は「事故はたまたま起きた」ということで済ませたい企業文化を如実に表している。この企業がなすべきことは遺族、被害者への真摯な対応と事故原因の徹底的な追究・再発防止にあることは明らかである。なぜ原因の究明に蓋をしようとするのかーそれは企業、幹部の保身に過ぎない。

そういえば、10年前の山陽新幹線トンネル内壁落下事故も根本的な調査と補修をしないですぐに安全との結論を出したものの、すぐその後に同じような落下事故が起きていた。

これも「落下事故はたまたま起きた」ことで済ませたいことによるものだろう。200kgのコンクリート片4個が時速220kmで走行中の新幹線の屋根を直撃したにも拘わらず脱線という重大惨事が起きなかったことは正に運が良かったに過ぎなかった。

企業の本当の真価が際立つのは事故や不祥事が発生した後始末においてである。

トップは早く負の仕事から解放されたい一心からどうしても事故・不祥事は一過性のものであることを強調する。しかし、そこに落とし穴がある。その場をたとえうまく処理したとしても次にさらに大きな事故・不祥事が起きる確率が高いからである。そのときはまさに企業の存亡をかけた危機となる。今までに多くの企業が信頼を失い社会から見放された。

それを回避するポイントはあくまで初動から「なぜ起きたのか?」を問い、根本的な対策を立てるという姿勢のみである。

現代はコンプライアンス至上主義である。その結果、コンプライアンスさえ守っていれば何とかなるだろうという一種の信仰にもなっている。しかし、これは企業リスクに正面から向き合っていない状態でもある。重大なリスクを回避するためには何よりも静かに進行する組織的なリスクをいち早く見つけ対処することが肝心である。それには現場で秘かに処理されているかも知れないことを洗い出す仕組みがなくてはならない。それはそんなに難しいことではない。なぜなら、すべてのリスクには必ず兆候があるからである。要はそれらに早く気づくかどうかに掛かっている。

一見些細な事象にも目を向けるーリスクマネジメントのプロは職場の空気の少しの乱れにもいち早く気がつくのである。コンプライアンスの確立を急ぎ、それを数値化し、達成して安心といったことも行われているが、それと並行して小さな出来事に目を向け、日々反省し振り返るという行動も大切である。現在のところ、企業のこのような行動、習熟度を測り数値化するといった試みはない。しかし、リスク対策のプロになるべき企業には必ず、日々「反省・振り返り」といった習慣が備わっている。世界最強といわれる米国海兵隊の訓練も実はこの繰り返しである。「アフターアクションレビュー」というもので毎日の訓練の終了後、一人ずつ、今日の訓練に際し「どんなことが起きるかを想定したか」「実際に何が起きたか」「想定と現実とに差があるのならそれはなぜか」といったことを毎日考えなくてはならないプログラムである。その結果、予想と現実との差が少なくなる。

このように将棋の世界同様、リスク対策としてのプロとアマとの差は大きく、プロ企業はこのような当たり前の習性をトップから一従業員まで持っているのである。リスクの多様化が言われている現代、是非、細部に目を向けその中の重大性にいち早く気がつく習性をまずトップから身に着けることを実践していってもらいたいものである。


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