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工藤 誠一 氏
インタビュー 2020年8月
教育観の根本にあるのは「人の温もり」を伝えられる、弱者に対する思いやり。
学校法人聖マリア学園 理事長聖光学院中学校・高等学校 校長
工藤 誠一 氏  
PROFILE
聖光学院11期生。明治大学大学院修了後、聖光学院の社会科教諭として勤務ののち、2004年より現職。
一般財団法人神奈川県私立中学高等学校協会、県教育振興会、横浜YMCA学院の各理事長を務める。2016年、藍綬褒章受章。

──●現在、理事長と校長を兼務されていますが、当初は教員からスタートされていますね

大学を卒業して、当時教諭不足だった本校で社会科教諭として勤務しました。私は実家が鶴見で自動車の部品製造会社を営んでいて、いずれ帰ろうと思っていましたが子どもと接する仕事が面白くなって続けることになり、そうこうしているうちに修道会から事務長になってくれと打診を受けて、事務長として6年務め、その後教頭を経て、48歳で校長になりました。カトリックの学校ということもあり先代まで3代続けて外国人で、私が初の日本人校長になります。

──●教頭を務めて、校長になるのは自然の流れだったのでしょうか。

もともとの母体が小さな修道会だったので、日本人の就任に対してあまり反発がなかったのでしょう。また多くの私学の校長がそうであるように私自身が本校の卒業生であること、そして事務長の経験から財務状況に明るく経営面での期待もあったこと、そして何より信者であったこと、そういう理由かあると思います

──●昨年は東大合格者数が全国4位で、最難関大学への進学実績に定評があります。創立当初から進学校を目指してきて、今やその評価、実績は国内トップクラスになっています。

本校は創立当初から同じカトリック系の栄光学園に追い付け追い越せの姿勢で、先代までの校長も強いリーダーシップを発揮してきました。色々な制度改革や取り組みを行ってきましたが、詰め込みの教育や小手先の勉強では進学実績は伸びないということは基本的な考え方としてありました。そのなかで部活動や学園祭、海外研修への熱心な取り組みをはじめ教養を高めるため各分野の専門家を招く「聖光塾」、ギターやバイオリン、演劇などを学べる「選択芸術」など情操養育に厚みをもたせて、中高一貫校である特徴を活かし6年通して実践してきた。それが結果として、子どもたちの理解力や思考力、表現力や文章力といったものを高め、進学実績としても結実しているんだと思います。

──●10代において色々な体験が大切だということですか。

そうです。本校の方針は生徒たちを学校に縛りつけない、という点にあります。社会は目まぐるしいスピードで変化していて、学校教育で補えない領域も増えています。それでも時代にはしなやかに対応していかなくてはならない。そのためには学校のなかだけではなく、いろいろな場をつくって体験のチャンスを広げて、新しいステージを次々用意していく必要があります。教諭は、生徒が得たことや体験したことをつなぎ合わせてアドバイスする、ファシリテーターとしての役割も担っていくわけです。体験や新たな知見によって、生徒は自己実現を目指し、自己肯定感を高めていく。ここが非常に大切です。今は、学校というフレームをもっと大きくとらえて考えていくことが必要になっています。

東大の合格者数というのはひとつの数字であり、目安ではあるがすべてではないのです。大事なのは、生徒たちが自己実現のためにどこに進めば良いかを考え、選んだ結果が東大であればそれでいいし、ハーバードでもMITでもスタンフォードでもいい。行きたいところを尊重して後押しするのが本校の役割です。実際にこういう海外の大学を目指す生徒も出てきています。

──●聖光学院では30年以上前から少子化時代を見据えた取り組みを行い、その人財育成、進学実績などから絶大な人気を誇るようになりました。理事長の立場から「経営」についてはどうお考えですか。

私学は教育と経営を両立させていく必要がありますが、本校も常に経営テーマをもって運営にあたってきました。現在、生徒募集においてはおかげさまで大勢の応募をいただいており心配はありませんが、大きく間口を広げて総合学園にしたいのではありません。学校の特徴として打ち出しているのは、男子校としてリーダーシップある人財を育成する、エクセレントスクールでありたいと考えています。そのために相応しい指導体制を整える必要があります。優れた教師陣が必要です。また彼らが最大限能力を発揮できるようにするのも私の仕事です。

──●事務長も経験したなかで磨かれてきた、経営のバランス感覚が活かされているということでしょうか。

健全な経営があってこそ健全な教育があるわけですからね。渋沢栄一はその著書のなかで「片手に論語、片手にそろばん」といって、道徳と利益の調和を説きましたが、私は「片手に聖書、片手にそろばん」です。士魂商才といっていいかも知れませんが、武士のような魂も必要ですが、それだけでは生きていけません。商いの才も大切です。聖書においてもお金を稼ぐことは肯定的に記されています。ある人がイエスの前にきて相談します。「私は一生懸命、真面目に生きてきました。どうしたら天国へ行けるでしょうか」と。イエスは「あなたが今もっているものをすべて売り払って私に付いてきなさい」と答えます。つまり事業をしてお金を稼ぐことは良いけれど、蓄財はいけないという教えです。どのように使うかが大切かと説いています。

質の高い教育にもお金がかかります。優秀な教師を集めるのもそうですが、良い教育環境を整えるには相応のコストがかかります。エクセレントスクルールであるために、たとえば2014年には新校舎を建て、1500人収容の講堂も整えた。スタンウェイのピアノを弾くことができる学校がどれだけあるでしょうか。本校はカトリックの価値観にもとづいた教育を行いますが、決して教条主義ではなく、私学という経営体として自立するためにバランスのとれた運営を行っていますし、これからもそうありたいと考えています。

──●エクセレントスクールとして育ててきたい人財像とはどのようなものでしょうか。

先ほど申し上げたように、さまざまな体験を通して目指す場所が決まったら、それが政界でも財界でも、医療でも芸術・学問の分野でもいい。それぞれの世界で活躍できる人を育てたいですね。人間性として求めたいのは小さき弱き者とともに歩むことができる人間になってほしいです。かのマザーテレサがカルカッタの町に施しに出かける際にシスターたちに「私たちはこれからスープを配りにいきますが、スープを渡すときに肩に手を触れ、微笑みながら声をかけましょう。そして温もりを伝えましょう、それがあなたたちの使命です」と言っていたそうです。スープを平等に配るならロボットの方が早く正確にできるでしょうが、温もりを伝えることはできません。私はカトリックのミッションスクールの校長として、人々に温もりを伝えられる人になってほしいと願っています。

テ聖光学院校長室にて(6月8日取材)
インタビュアー広報委員 福井・稲葉事務局長

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