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公告の掲載について
影山 摩子弥 氏
インタビュー 2006年11月
環境を破壊したり、労働者をクビにしたり、生活を脅かしたりする権利は、企業にはない。
横浜市立大学CSRセンターLLP センター長
影山 摩子弥
PROFILE
1959年 静岡県浜北市(現在は合併して浜松市)に生まれる。1983年 早稲田大学商学部卒、1989年 早稲田大学商学研究科博士後期課程修了。1989年 横浜市立大学商学部に専任講師として奉職、1990年同助教授、2001年同教授、2005年 横浜市立大学国際総合科学研究院 教授(現在に至る)。2002年 横浜市立大学生活協同組合理事長(現在に至る)。2006年 横浜市立大学CSRセンターLLP センター長(現在に至る)。2006年 キャリアカウンセラー資格取得(現在に至る)。主著 『世界経済と人間生活の経済学』敬文堂

「CSR」とは?

──「CSR」という言葉はまだ耳になじみがないですが、どんなことをテーマにしているのでしょう。

「CSR」とはCorporate Social Responsibilityで、「企業の社会的責任」と訳されている言葉です。Corporateとあるように、以前は、営利企業に対して使っていましたが、今は、行政機関やNPOを含むすべての事業体が社会的責任を負うという流れになっています。そこでCを取り、SR「社会的責任」だけで使う場合もあります。ISOでも、環境や品質の規格がありますが、SRについても規格を作ろうとしております。

CSRセンターとは?

──横浜市立大学での社会人対象の講座からスタートして、企業の社会貢献に行き着いた経緯は?

ご存じのとおり横浜市立大学は去年法人化しまして、大きな改革を行ったのです。金沢八景のキャンパスにある商学部・理学部・国際文化学部を一つの国際総合科学部に統合し、私がいま張り付いている「ヨコハマ起業戦略コース」を作ったのです。会社の起こし方や街づくり、国際協力などを教えて、社会により貢献する学生を育てましょうというのがコンセプトです。

その延長線上で、私がこの(CSRセンターという)会社を作ろうと思いましたのは、一つには、自分が起業したことのない教員が学生に起業を教えるのは、ちょっと詐欺に近いんじゃないかな(笑)と思いまして。もう一つは、市民の税金で運営している大学ですので、より地域に貢献することを視野に入れて起業したいと思ったわけです。地域貢献と起業をミックスさせて出てきたのがCSRセンターという構想だったのです。2004年くらいに構想をまとめまして、この春から設立に至りました。

会社の事業内容としましては、CSRについてのコンサルティング、若手の経営者を対象とした経営者塾、企業の経営者やCSR部門の担当者、市民を対象としたCSRの解説講座の開催などが柱になっております。

──横浜市立大学を母体として生まれたけれども、別法人になっているのですね。

はい。私のような素人は信用もございませんので、お金を貸してくれる所もございません。そこで、起ち上げやすい形態を模索しました。最初、NPOを考えたのですが、金儲けでないというところで逆に信用がないのではないか。「お金を取る以上はきちんとした仕事をやる」という考え方もあるように思います。営利的でしかも起ち上げやすい形態を考えて、有限責任の事業組合(LLP)という形にしました。手続きが非常に簡単なんです。(短期間で登記が完了する。最低2円の出資金で設立可能。登記費用が6万円。構成員課税。)

CSRの導入は大変なのでしょうか?

地域貢献を視野に、コンサルティングと、経営者や市民の皆さんに対する講座開催を行っております。前者に関してですが、CSRというのは事業活動のあらゆる局面に対応する項目から成っています。法令遵守、財務、環境、品質、顧客対応、雇用、労働安全衛生、情報セキュリティ、社会貢献などです。このCSRは、大事ですが、企業にとっては導入と維持が大変で、コンサルティングを行えば大きな助けになると思ったのです。

たとえば、「事業活動を行う際、人々に迷惑をかけてはいけない」というのがCSRだと説明されたりしますが、取組みは、それほど簡単ではなく、難しさを伴います。

ISOを例に取ると、「ISO認証取得が流行っているので導入したけれど、お金はかかるし専門の部署に人を貼り付けないといけないので大変なだけだ」と言う声を聞くことがありますが、これは、好ましくない導入の例といえます。環境ISOを導入したことで、例えば「電力コストが削減できた」「事業にプラスになった」と企業が取組みの意義を自覚することが大事です。CSRもそうなんです。

コンプライアンスは当たり前だけど、弁護士と契約しないといけないので大変、顧客対応の窓口を作ったけど、維持にお金がかかって大変、という次元でやっていくと失敗するケースが非常に多いんです。CSRはうまく導入すれば、危機管理や収支の改善につながって事業にとってプラスになるんです。利益と直結するのがCSRなんです。

しかし、導入は、簡単ではない。特に中小企業の皆さんには大変なので、有益なアドバイスができればと思ったのです。さらに、その際の有力なツールとして考えましたのが、規格作りです。「これに従えば導入が楽です」という物を作りたかったのです。これに関してはビジネスモデル特許の出願も視野に入れています。

地域貢献という点では、もう一つの側面があります。CSRは、市民や消費者、働き手の生活のロジックに応えようとするものです。私は、日々生活を送っている市民の皆さんを視野に入れた地域貢献も考えたかったのです。企業と生活者に対する地域貢献が切り結ぶ点にあったのが、CSRだったんです。

安ければよいか?

行政機関では、グリーン調達やISO調達を実施しているところもありますが、多くは、入札で最も安い業者に落とすということをやっている。

ですが、マーケットメカニズムは、価格を軸に機能します。価格が商品のすべてを体現することになります。昔、100円化粧品が話題になりましたね。しかし、安い化粧品が出ても、高い化粧品も同時に売れていました。「高いから良いものだろう」という発想がその背景にあります。高い物は質が良い、安い物は質が悪いだろうという発想です。しかし、手を抜いた商品でも高い値段が設定されている可能性もあるんです。つまり、マーケットメカニズムは必ずしも品質を保証しないのです。

そのよい例が手抜き工事ですね。住宅でもビルでも、内装をきれいにして作っちゃうと、手抜きがあってもわからない。このように、マーケットに依存してしまうと、品質がおろそかになる側面が出て参ります。しかし、税金を有効に使うという観点から、価格面を重視した入札が行われてきています。

ところが、いろんな事故が起きるようになりました。プールで小学生が亡くなりましたが、行政が「節約のために最も安い業者に発注しただけなんだから、我々に責任はない」とは言いにくいはずで、「調べないでこんな業者に発注したのか」という批判も出ることになります。この点、横浜市はかなり問題意識を持っているようで、最近では、内部の勉強会の講師を頼まれたりしていまして、市も、CSRに目をむけ始めているように思います。また、青年会議所の方々が中心になって作った「横浜スタンダード」というNPO組織もCSRに着目しています。こういった動きがあいまって、横浜にCSRが定着してゆく可能性もあるように思います。

構造改革の先にあるものは?

──(大学での)ご専門の分野は?

大学では、「比較経済体制論」を担当しています。ただ、「経済体制」はイデオロギー的意味合いが強い言葉なんですが、私はシステムという客観的な視点で見て、次世代のシステムを考えたいと「経済システム論」という観点で研究をしてきております。この分野は、ちょっと抽象的な話が多いので、学生が最も嫌がる講義です(笑)。そんな講義でも、ウケがいいのは、なぜ構造改革が行われるか、その先に何を用意しなくてはいけないか、といった話です。

構造改革は、アメリカが「不公正の是正をしなさい」「日本の仕組みを変えなさい」と言ってきて進められたものです。日本はアメリカに倣って、市場経済化を進めました。しかし、市場は、製品や作業や生活の質を保証しないのです。なぜかというと、市場化は、競争を強めます。企業は一生懸命努力するのですが、それでも間に合わないとなると、良心的な経営がしにくくなってしまう。巷では、「悪いことをする業者は制裁を受けるから、皆悪いことをしなくなる」と言われることもありますが、ある業者が制裁を受けても、他の業者が同じようなことをやっている。これではいけません。これは市場メカニズムに自浄作用がないことを証明しているんです。しかも、制裁を受けるまでの間に犠牲者が少なからず出る。そこで、直接的に質を保証するシステムが必要ではないかということになる訳です。それがCSRなんですね。

ところで、CSRは、アメリカで展開してきた概念です。1950年代から60年代前半は、アメリカ資本主義の黄金期と言われますが、問題も出てくる。他方、当時は、公民権運動や反戦運動があり、人々が人権に敏感になってきていました。問題の噴出と告発する主体という背景が出来上がったことで、企業に環境を破壊したり、労働者をクビにしたりして生活を脅かす権利はない、という主張に基づいたCSRが展開します。

つまり、CSRが社会に定着するには、それに対応した社会のしくみ(社会システム)が必要です。CSRの展開は、NPOやソーシャルビジネス、社会資本といった、生活のロジックに応えようとする活動や事象と軌を一にします。それらは、新しい中間組織と呼ばれるように、新しい社会システムが求められていることを示しています。しかし、日本は構造改革を急ぐあまり、旧来のシステムを壊した後にいかなるシステムを作らねばならないかを視野に入れた施策を講じてこなかったのです。

公園掃除のCSR

──法人会の会員さんは中小企業ですので、力を一つに集めてCSRに取り組む役割が、法人会にあるかもしれないと感じます。一つの例として「横浜の美しい景色を取り戻そう」と投げかけて、花火大会の翌日、企業の皆さんを集めて山下公園の掃除をやっています。もう一つ、管内に大きなお弁当屋さんがあって、お弁当の空き箱を必ず回収に来ます。それもCSRの一つと考えていいのではないでしょうか。

そのとおり。お掃除はまさにCSRです。「山下公園は汚れている」という印象で家族連れは避けたりする。きれいにすることで人が来やすくなります。そして、その人々が横浜で買い物などをしていくのです。1日会社を休みにして公園を掃除するのは大変ですが、会社の売上げに結びついてくるという認識が生まれれば、積極的に取り組みやすくなると思います。CSRというのは負担ではなく、経営戦略として行われるべきものなんです。弁当の箱が放置されていたり散乱していれば、捨てた人が悪いのですが「それを見て何とも思わない弁当屋さんでは買いたくないな」というのが人の心理だと思うのです。

古い世代はこういうことに敏感だったように思います。どの企業も、「創業者の言葉」「おじいちゃんの言っていた経営理念」が口伝伝承みたいに残っていることがありますが、拝見させていただくと、中身はCSRなんですね。「お客さんの後からでも、背中向いていてわからなくても、頭を下げる」という気持ちや姿勢が日々の事業活動のなかで伝わる。「このお店いい感じするよね」と足を運ぶようになる。CSRで言うと顧客対応です。現実の社会は、「頭を下げることで売上げが何円上がるか」を厳密に示せなくても、経験で積み上げたことや「これが大事だ」という実感が大きな意味を持っています。

〈信頼財〉という大きな資本

近所の付き合いを大事にするのもCSRです。近親者が亡くなった際、お参りに来て下されば有り難いと思います。私も父を亡くしたときにそういう感情を持ちました。つまり、「あそこの商店主の方はきちんと来てくれる」という信頼が地域に生まれるんです。ゴミを拾うと「あそこはいつ行っても気持ちのいい街だ」という信頼感が生まれる。お客さんとの間で〈信頼財〉という、大きな資本が形成されるのです。お店や従業員も資本ですが、それだけでは企業はやっていけない。

儲けたお金は手元に残りますが、信頼というのはちょっと変なことをすると一瞬で失う。そして、失うと簡単には取り戻せない「財」です。これは近江商人が長年の経験で培ったことです。売り手は儲かってOK、買い手は良い商品を手に入れてOK、さらに、お客さんでない周りの世間の人たちも満足できる、こういう商売をやらないといけない。

頭で理解することには限界がある

(CSRの)導入の話なのですが、いろんな項目がありますが、通常、株主対応しかしない。配当です。でも、気持ちの良い山下公園を作ることで、お客様が来て下さってお金を落とし、それで利益が出れば配当も増えるはずです。これがCSRの考え方です。

考え方ではわかったとしても、事業のなかでどう結びつけるかが難しいのですね。法人会さんが、「ゴミを拾いましょう」といったパンフレットを配布するなどで満足せず、皆さんを集めてゴミを拾ったというのは本当に意味のあることなんです。体験した皆さんの中に、経営戦略として何が大事かという下地ができていく。体験で理解していただくことが大事です。それが意欲・やる気につながるのです。頭だけで理解したことは忘れやすい。そうなると、意欲につながりません。

ある企業が営業部門の強化という課題に直面しました。そこでどうしたかというと、トップの成績を上げているスーパー営業マンに、素質の有りそうなのを何人か指名させ、24時間彼に貼り付かせる。これをしばらくやると、彼らは、スーパー営業マンに脱皮していくのです。スーパー営業マン自身も、何がなぜ重要か説明できない。でも、彼らがスーパー営業マンから感じ取ったことを実践すると、成功するわけです。これが職人さんが培ってきた徒弟制度の意味です。経験で伝わるものが大事なんです。

小学校で体験学習ってやってるじゃないですか。目の前で生き物がピチピチ動いていることを体験することで、生態系を刷り込んでいく。体験学習は、失敗といわれることもありますが、効果的なプログラムであれば、「環境が大事」ということが、理解できるのです。人間は、頭と心で理解する生き物です。

勉強は3科目しかできない

──子どもの時に刷り込まれたことが大事だと言われましたが、子ども時代のエピソードをお聞かせ下さい。お生まれは?

浜松の奥のほうの浜北市(現・浜松市)という所です。ちょっと田舎のほうです。あんまり立派なエピソードはなくて。大学の先生になるような方は、一流高校を出て、一流大学を出て、大学の先生に見そめられて研究者になっていくというケースがほとんどです。でも、私はかなり違います。高校は地元の三流高校で、地元ではあんまり高校の名前を言いたくない(笑)。その高校の子は町に出ると徽章を外しちゃうんです、恥ずかしいから。自慢できることは全くないんです。

──大学は横浜市大に行かれたのですか?

国公立はめっそうもない(笑)。浪人もしました。パーソナリティの点では、まず、非常にわがまま(笑)。融通がきかない。この科目は面白いけれどこっちはやらないというタイプ。一番困るタイプです。研究者には向いているかもしれません。これが面白いとなると、とことんやりますから。で、第1回目の共通一次試験を受けたのですが、当時は(受験科目が)5教科7科目。でも私は3科目しかできない(笑)。結局、3科目で受験できる私立大学に絞りまして、出身は早稲田大学になります。

──社会主義を勉強されたと、その発端は?

大学に入って、私、最初はやる気があったんです。ということは、途中でなくしていくんですが(笑)、早稲田には入りたかった。入ったからには勉強しようと。父が亡くなって母独りでやってくれていますので、少しでも楽にする意味でもしっかり勉強してちゃんと会社に入って、と思っていたんです。そこで、とりあえずいろんな本を読みました。最初に経済学の本を読んでみたのですが、納得できない。人間は数式では説明できない気がする。「経済学ってうさん臭い学問じゃないか」と思っちゃった。世の中の根本を知り、その上でどういう学問が必要か見抜かないといけない。根本を知るのは哲学だ。そこで、ギリシャ哲学の本から始めたのです。

哲学は、高校の時から少し読んでいました。当時、まだファンがいたサルトルについては「このおっさんイマイチだな」(笑)。次に読んだヘーゲルは、理性が社会のすべてを作っていくという説明をする。「この人、世界のすべてを説明している、すごい」と思ったんです。でも、すぐに構図がきれい過ぎるように感じた。ハイデッガーは「存在とは何かを問わないといけない。存在の意味を明らかにできるのは人間である。世界の中心には人間がいる」。この視点は面白いと思いました。で、高校のころは、ハイデッガー止まりだったんです。

哲学から社会主義研究へ

大学に入って、ギリシャ哲学から読み始めて、マルクスのそれまで読んだことのない本を読んだ。共産主義を今すぐ実現できるとは思わなかったんですが、マルクスは哲学の究極の形態みたいに思えた。東洋の哲学も読んだのですが、それも集約する観点をマルクスは持っていると思ったんです。そういう(マルクスの)読み方をしている学者はほとんどいない。資本主義側の人たちは、マルクスのある部分だけを取り上げて批判している。社会主義側の人たちも、都合のよい読み方をして自分たちを正当化している。どっちも違う、と思ったんです。マルクスには、もっと深い視点がある。でも、マルクスの視点を実現しているはずの社会主義はちぐはぐに見えた。なぜできないのかと疑問を持ち、社会主義を研究してみようと思ったわけです。

──どういう分野からスタートされたのですか?

東ドイツの協同組合の研究をしておりまして、社会主義の専門家として、1989年に横浜市大に採用されました。当時、社会主義の専門家というと、左か右かという時代だった。でも、ソ連がペレストロイカで大きく動いていて、「社会主義万歳」という講義でも「社会主義なんてトンデモナイ」という講義でも時代を捉えられない。でも、社会主義論では大学への就職は全くないという時代で、新しい視点で研究している若手の研究者があまりいませんでした。そこで、私みたいな者に話が来たという次第。

CSRを横浜の地に

──CSRセンターで今後予定されている講座などありますか。

現在、5名で役割分担していまして、CSR講座や経営者塾といった講座の開催を企画しています。また、直接企業さんに出向いてご相談を承ることも行っています。コンサルティングは、料金を頂きますが、なるべく中小企業さんをバックアップしたいと思っていますので、リーズナブルな価格でと思っています。

──講演会も法人会でさせていただければ。あまり予算を持ってないですけど(笑)。CSRが浸透することで、横浜がすごい街になることを目指したいですね。

そう思っています。よろしくお願いします。

税経研修センターにて(9月15日取材)
インタビュアー 廣岡・小竹・日臺

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